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ひねもすのたりの日常&時々非日常

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武士の一分

こうなりゃ、藤沢作品を総ざらいしてみるか。

「武士の一分」
・制作年:2006年
・監督:山田洋次
・原作:藤沢周平 「隠し剣秋風抄」盲目剣谺(こだま)返し
・キャスト:木村拓哉(三村新之丞)、壇れい(三村加世)、笹野高史(徳平)、坂東三津五郎(島田藤弥)、桃井かおり(波多野以寧)、緒方拳(木部孫八郎)ほか

原作は藤沢周平全集第十六巻に所収されている短編である。

「たそがれ清兵衛」、「隠し剣鬼の爪」に続く山田洋次監督の時代劇の完結編と云う扱いになっているらしい。因みにこの映画は、松竹の配給映画として、当時としては歴代最高の40億円以上の興行収入を記録したヒット作となっているそうである。

全2作が、藤沢周平氏の短編数編の合作となっているのに対して、この映画は原作1編を主題とするストーリーとなっている。

木村拓哉扮する三村新之丞は、海坂藩の毒味役を務める三十石取りの下級武士である。

映画の冒頭シーンは、三村が毒味役として「赤ツブ貝」を食べて中毒を起こすところからスタートするが、原作では「笠貝」となっており食材としてはあまり聞いたことのない貝である。映画でもこのあたりは一般的なツブ貝に置き換えたものと思われる。

小説では、盲目となった三村が妻加世の不倫の兆しを感じ取るあたりから始まり、不倫の事実、妻の離縁、不倫相手との果し合い、と云う順でストーリが展開されるが、映画の冒頭で三村が盲目となり、その後の物語を見せるには効果的である。

山田監督の前2作のタイトルは、いずれも小説の原題そのままだが、本作だけ違っている。「武士の一分」は、小説の中では果し合いを行う三村が「武士の一分が立てればそれでよい」と云う表現に使われているだけである。ただ、盲目となった三村が果し合いを行うのは、夫の為に自ら地獄に落ちた妻加世の仇を討つためであり、それは武士として命にかけても守らねばならない面目、すなわち武士の一分なのである。

藤沢小説で、武士の一分を賭けて事を成すと云う物語は他にもあるけれど、これを映画のタイトルに使ったのは正解だと思う。小説どおりの「盲目剣谺返し」では、ルビを振らなければなかなか読めないし、小説を読んでいない人には、ストーリーは良く判らなくても武士の面目を賭けた物語なのだ、と云うアナウンス効果もあったと思う。

どうでも良いことだが、作中人物で三村と果し合いをする島田藤弥(坂東三津五郎)は、原作では「島村藤弥」である。他の人物が原作どおりであるのに、この人物だけあえて名前を変えた理由が判らない。

小説と異なる映画のオリジナリティーは随所にあるのだが、毒に当たって意識のない三村に薬を飲ませるシーンで、妻加世が口移しで飲ませる場面があるが、こういうのは藤沢氏が存命であれば承諾しなかったのではないだろうか。

藤沢小説にはあまり荒唐無稽な物語は登場しないが、盲目の侍が一刀流免許皆伝の剣士と斬り合って勝つ、などと云うのは荒唐無稽な部類に入ると思うが座頭市の様な例もあるので物語としては面白い。

小説は比較的淡白だが映画は濃厚で見応えのある作品となっている。

キムタクについては賛否両論かと思うが、スマップの人気絶頂期であれば歴代最高の興行収入はさもありなん、と云うところか。金麦のお姉さんは宝塚だけあって見栄えのする女優さんである。

評価⭐️⭐️⭐️⭐️




by go_st_andrews | 2015-07-15 20:41 | 映画の部屋

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